番線は本来、工事区域と公共空間を区切り、安全のために設けられた境界を固定するために用いられる。本作ではその役目を終え、錆びたり壊れたりして地面に落ちていた番線の断片をつなぎ合わせ、文字のない筆跡や、アルファベットを持たない記号の連なりのように見せることで、番線のもつ機能や形態を読み替えることを試みている。多様なバックグラウンドを持つ人々が暮らす都市の背後で、都市を支える不可視の労働と身体へと注意を向けるためである。とりわけ英語を話さない移民労働者の存在が、現在の都市のありようと深く関わっているという実感から、本作は生まれた。
鑑賞者がスマートフォンのカメラを作品に向けると、自動の文字認識が番線を文字として読み取ろうとすることがある。あるときそれは「8つの逃げる裸のラマル、巻かれたあなたたち二人」といった趣旨のフレーズを生成した。こうした誤読は、もともと文字として意図されていない線であっても、まだ名づけられていない言葉や、意味の断片、詩のようなものとして立ち上がりうることを示唆している。

スマートフォンによる自動文字認識の検出画面(スクリーンショット)

番線(拾得時の記録写真), ロサンゼルス, 2024年