Le provisoire permanent

2011-2012

工事現場内インスタレーション, 写真, 日記, 文章

[e-book] Le provisoire permanent (2020.05.13追加)
日本語版, 横画面推奨
アートプロジェクト「Le provisoire permanent」の記録本。
オリジナル版はフランス語で2012年に制作、日本語電子書籍版は2020年に制作、全134ページ。

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このプロジェクトは、2011年から都市リサーチアトリエ(L’Atelier de Recherche Urbain, フランス)において、ETAMAT(19世紀後半に火薬庫などとして使われていた軍事施設。それをディジョン市は2010年から2012年の間、都市建設用資材置き場として利用していた)という実際に活動中の工事現場で行なわれた。2011年、ディジョン市内では都市開発によるトラムウェイ建設のための工事があちこちで行なわれており、ETAMAT はそのための資材置き場として使われていた。軍の建造物は次第に解体、そして粉砕され、新しい都市をつくるための材料となっていった。

「Le provisoire permanent」(恒久的な仮設性・一時性)というプロジェクトはこのような一風変わった状況下で行なわれた。私はこの場所に8 ヶ月間通い、写真を撮り、日記と文章を書き、サイトスペシフィックなインスタレーションを制作した。

「何が自分の行なっていることで、何が自分の行なっていないことなのか」という疑問を出発点とし、私は「意志と無意志」というテーマの下、工事現場内の水たまりを使い、ひとつの行為を提示した。その場にある瓦礫を選び出し、それらを手で運び、水たまりの周囲にひとつひとつ置いていった。冬のディジョンでは常に雨が降るので、水たまりはその場所を象徴するひとつの要素となっていたのと同時に、水たまりは天候や温度、湿度の影響をダイレクトに受けた。作業をする重機は地面をうねらせ、時に私が並べた瓦礫を踏みつぶしていった。この工事現場内において、水たまりも、瓦礫も、一瞬たりとも同じ状態を保つことはなかった。私は、「自然」「労働者」「私自身」の各要素によって影響を受ける「瓦礫を水たまりの周囲に配置する」という行為を繰り返し行い、時間の経過に沿ってその様子の変化を記録した。それは「つくる」と「意志」という言葉に関わる、主体への問いかけだった。

2012年4月16日、私たち約20人の学生は、ETAMAT を一般開放する機会を得た。私は行為の痕跡をインスタレーション作品として提示した。このモニュメンタルな作品は、作品と周囲の風景とをつなぎ、そして訪問者にETAMAT という場所をより近く感じさせる役割を果たした。